医薬品医療機器等法は、なぜ存在するのでしょうか?
何のために制定されたのでしょうか?

「指定薬物の規制」や「医薬品の研究開発の促進」は目的ではありませんよ。
医薬品医療機器等法では、製造や販売、広告など医薬品等に関する様々な規制が行われていますが、
それらの規制は全て「目的」を達成するための手段にすぎません。
本ページでは医薬品医療機器等法の「目的」についてのご紹介したいと思います。
医薬品医療機器等法の条文
医薬品医療機器等法の「目的」については、法律の<第1条>に記載されています。
法律の条文を確認してみましょう。
(目的)
<第1条>この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
平成25年11月27日法律第84号による改正後の昭和35年法律第145号(2014年11月25日施行)
原文は 総務省 e-gov法令検索 でご確認いただけます。
第1条の見出しが(目的)となっていますので、
目的についてはここを確認すればよいということになります。
第1条全体が「目的」となっていますね。
以上終わり、では面白くありませんので、
第1条を分解して直接の目的をあぶりだしていきたいと思います。
直接の目的
第1条は、色々とずらずら記載されていますが、端折ると次のようになります。
この法律は、……ことにより、……保健衛生の向上を図ることを目的とする。
だいぶスッキリしました。
「保健衛生の向上を図ること」が医薬品医療機器等法の直接の目的ということですね。
せっかくですので、残りの「……ことにより、」の部分についても見てみましょう。
直接の目的を達成するための手段
「ことにより、」という言葉からもわかるように、第1条の残りの部分では、直接の目的を達成するための「手段」について述べられています。
……医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、……
長いのであえて分けてみると、次のような感じでしょうか。
- 医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制
- 医薬品等の使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制
- 指定薬物の規制に関する措置
- 医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置
上記のような規制を行ったり、措置を講ずることで直接の目的を達成しますよ、ということですね。
図で見てみましょう。

「直接の目的」と「手段」の区別が、しっかりできましたね。
薬事法制定時からの第1条(目的)の変遷
話は少しそれますが、これまでの第1条(目的)の変遷についてまとめましたのでご紹介します。
現在では、とても長くなってしまった第1条(205文字)ですが、
昭和36年の薬事法施行時には、次のようにたった53文字の規定でした。
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、その適正をはかることを目的とする。
当時の薬事法の直接の目的は、「医薬品等の適正をはかること」でした。
そこからだんだんと変化していき、
平成5年には現在と同じように「保健衛生の向上を図ること」を直接の目的とするようになりました。

最初は”物”中心の目的でしたが、だんだんと”人”中心の目的に変わっていったんですね。
第1条(目的)の変遷について、次の表にまとめてみました。
施行日 | 第1条(目的) |
昭和36年2月1日 | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、 その適正をはかることを目的とする。 |
昭和55年9月30日 | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具に関する事項を規制し、 もつてこれらの品質、有効性及び安全性を確保することを目的とする。 |
平成5年10月1日 | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、有効性及び安全 性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬 品及び医療用具の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健 衛生の向上を図ることを目的とする。 |
平成17年4月1日 | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全 性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医薬 品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健 衛生の向上を図ることを目的とする。 |
平成19年4月1日 | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全 性の確保のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講 ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進の ために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。 |
平成26年11月25日 (~現在) | この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下 「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用に よる保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、 指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、 医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずること により、保健衛生の向上を図ることを目的とする。 |
希少疾病用医薬品等の規定ができた平成5年には、目的に「研究開発の促進」が加わり、
「医療用具」から「医療機器」に呼び方が変わった平成17年には、、、、、、
というように、法律の中身が変わるたびに目的も少しずつ変化してきていますね。
まとめ
以上、本ページでは、
医薬品医療機器等法の目的についてご紹介しました。
「保健衛生の向上を図る」という目的を達成するために様々な規制や措置が行われています。

医薬品医療機器等法の条文的には、第1条の全文が「目的」です。
しかしながら今回のように、あえて第1条を分解する場合には、
「直接の目的」と「手段」の2つに分けることができます。
「直接の目的」と「手段」を読み違えないようにしたいですね。
ありがとうございました!
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