組織再編「薬事・食品衛生審議会」から「薬事審議会」へ【2024年4月施行】

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こんにちは、ジンです。

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本ページは、施行日(2024年4月1日)より前に作成されました。施行日以降の情報については、情報を入手次第、本ページ下部に追記更新していく予定です。

2023年5月に「生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律」公布されました。

生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律
(令和5年法律第36号、公布日:2023年5月26日)

本改正では、これまで「薬事・食品衛生審議会」として運用されてきた組織体が「薬事審議会」へと組織改編される旨が示されています。

体外診断用医薬品関係の運用には特に影響がなさそうですが、情報収集がてらまとめてみました。

ジン
ジン

色々調べてみましたが、医薬品医療機器等法の関係者にとっては「薬事・食品衛生審議会」から「薬事審議会」への単なる名称変更という理解でよさそうです。

改正の沿革

<2023年3月7日 国会提出>
生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案
(第211回閣法第45号)

<2023年4月27日 衆議院可決>

<2023年5月19日 参議院可決>

<2023年5月26日 法律公布>
生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律
(令和5年法律第36号)

<2024年4月1日 施行>

旧「薬事・食品衛生審議会」とは?

まずは旧「薬事・食品衛生審議会」について確認していきましょう。

 

皆さんご存じのテレビでよく見る厚生労働大臣は、日々厚生労働省管轄の法令に関して様々な判断をし、法令に基づく決定を下しています。厚生労働大臣が判断に困ったときに厚生労働大臣に対して意見を述べる役割を果たしている組織体を「審議会」と言います。

厚生労働省には様々な法令に基づいて意見を述べる審議会がたくさんありますが、その中でも医薬品医療機器等法に関する意見を述べる役割をしているのが「薬事・食品衛生審議会」です。

「薬事・食品衛生審議会」は、厚生労働大臣が薬事・食品衛生行政で困ったときの「ご意見番※」としての役割をはたしていると言えるでしょう。
※難しい言い方をすると「諮問機関」と言うこともできますね。

 

「薬事・食品衛生審議会」のメンバーは医師や薬剤師、研究者等の有識者で構成され、定員は30名となっています。

最新の委員名簿のリンクを載せておきます(2023年1月26日現在、30名)。

薬事・食品衛生審議会での審議事項

薬事・食品衛生審議会では、どのようなことが話し合われるのでしょうか?厚生労働大臣は何でもかんでも審議会に意見を聴けるわけではありません。

意見を聴ける事項(意見を聴かなければならない事項)というのが法律で定められています。

例えば緊急承認についてです。医薬品医療機器等法の条文では次のように規定されています。

(緊急承認)
第23条の2の5の承認の申請者が製造販売をしようとする物が、…体外診断用医薬品として政令で定めるものである場合には、厚生労働大臣は、…薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、…承認を与えることができる

医薬品医療機器等法 第23条の2の6の2第1項(抜粋)
原文は 総務省 e-Gov法令検索 でご確認いただけます。
図1. 厚生労働大臣は緊急承認に際して薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない

その他にも体外診断用医薬品でいうと、厚生労働大臣は次の事項について薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければなりません。

  • 緊急承認、承認期限の延長【法第23条の2の6の2第1項、第3項】
  • 特例承認【法第23条の2の8第1項】
  • 使用成績調査の対象となる体外診断用医薬品の指定【法第23条の2の9第1項】
  • 第一類医薬品や第二類医薬品の指定、変更【法第36条の7第3項】
  • 日本薬局方の作成、10年ごとの全面改訂【法第41条第1項、第2項】
  • 体外診断用医薬品の基本要件基準の設定【法第41条第3項】
  • 保健衛生上特別の注意を要する医薬品の基準の設定【法第42条第1項】
  • 毒薬、劇薬の指定【法第44条第1項、第2項】
  • 特殊疾病を定める政令の制定、改廃【法第67条第2項】
  • 副作用報告や回収報告に関して必要な措置【法第68条の12第1項】
  • その他保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために必要な措置【法第68条の12第2項】
  • 製造販売承認の取消【第74条の2第1項】
  • 希少疾病用医薬品の指定【第77条の2第1項】
  • 先駆的医薬品の指定【第77条の2第2項】
  • 特定用途医薬品の指定【第77条の2第3項】
ジン
ジン

体外診断用医薬品関連の規定だけでこんなにも沢山あります。医薬品や医療機器、再生医療等製品なども含めると恐ろしい量になりますね。。。

加えて、薬事・食品衛生審議会で審議される事項は、医薬品医療機器等法の規定によるものだけではありません。

薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて

という規定は、医薬品医療機器等法以外の他の法令でも規定されています。

  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成14年法律第192号)
  • 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)
  • 安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和31年法律第160号)
  • 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(昭和48年法律第112号)
  • 食品衛生法(昭和22年法律第233号)
  • 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)
  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和54年法律第49号)
  • 資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)
  • 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年法律第112号)
  • 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号)
  • プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和3年法律第60号)
ジン
ジン

対象となる法律が多すぎますね。。。

委員はたった30名しかいませんのでオーバーワークにならないか心配です。

薬事・食品衛生審議会の組織

上記の通り、様々な法律に基づいた事項について審議しますので、1つの会議体だと色々な話がゴチャゴチャになってしまいます。

そこで、薬事・食品衛生審議会では「薬事分科会」と「食品衛生分科会」の2つの分科会を置いて、それぞれの法律に基づいて審議が行われています。

図2. 「薬事分科会」と「食品衛生分科会」
先輩
先輩

なんか「食品衛生分科会」だけ仕事少なくて、らくしてない?

ジン
ジン

そんなことないです、確かに所掌する事務は「食品衛生法」のものだけですが、

組換え食品から食中毒まで、審議事項はたくさんあるんです。

日本の安心・安全な食生活のために活動しています。

先輩
先輩

確かに。「衣食住」なら「食」が一番重要やねー。

「薬事・食品衛生審議会」は「薬事分科会」と「食品衛生分科会」に分けられていますが、

より深く、専門的な審議ができるように、各分科会には様々な部会が置かれています。各部会において種々の審議がされています。

図3. 薬事分科会や食品衛生分科会に置かれる部会

各部会のメンバーは、薬事・食品衛生審議会の30名の中から選出されます。

ジン
ジン

部会では様々なことが議論されていますので、気になる部会があれば議事録を読んでみると結構面白いです。毎回の議事録のアップロードが遅いのが難点ですが。。。

「薬事・食品衛生審議会」から「薬事審議会」へ

はい、それでは、旧「薬事・食品衛生審議会」について確認できたところで、ようやく今回の改正について確認しましょう。

今回の法改正は次の3本柱となっています。

  1. 食品衛生基準行政の機能強化
  2. 水道整備・管理行政の機能強化
  3. 所掌事務等の見直し

このうち、医薬品医療機器等法に関係するのが、1番目の「食品衛生基準行政の機能強化」です。

食品等の規格基準の策定や食品衛生基準行政に関係する事務について、これまでは厚生労働大臣(厚生労働省)の管轄でしたが、改正後には内閣総理大臣(消費者庁)の管轄に入ります。

この改正の理由については、改正案概要の中で「科学的知見に基づきつつ、食品の安全性の確保を図る上で必要な環境の総合的な整備に関する事項の総合調整等に係る事務と一体的に行う観点から」と説明されていました。

また、その他の食品衛生法の関係の事務(食品衛生監視行政)に関しては、「薬事・食品衛生審議会」から厚生科学審議会に移管されます。

視覚的にわかりやすいように図4をご用意しました。

図4. 改正の概要

 

結果として「薬事・食品衛生審議会」のうち「食品衛生分科会」の仕事がなくなり、「薬事分科会」のみとなりますので、「薬事・食品衛生審議会」は「薬事審議会」へと名称を変更されることになります。

上述の通り、今回の改正の主目的は「食品衛生基準行政の機能強化」のために「食品衛生分科会」の事務を分担(移管)させることであって、

「薬事・食品衛生審議会」から「薬事審議会」への改称はいわばオマケですので、医薬品医療機器等法の関係者にとっては、大した影響はないということになります。

 

今後の展開については厚生労働省から通知が発出されており、次のように述べられています。

…今後、施行に向けて、政省令の改正等の必要な措置を進めていく…

令和5年5月26日付け生食発0526第1号
原文は 厚生労働省法令等データベースサービス でご確認いただけます。

 

現時点で分かっていることは以上です。

また、新たな情報があれば更新したいと思います。

ジン
ジン

以上、我々が普段生活していく中では特に関係のないお話でした。

薬剤師さんに関係する審議会といえば「医道審議会」ですね。厚生労働大臣は薬剤師免許取消処分のときに医道審議会の意見を聴かなければなりません。

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